第三章 過去

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「そっか……、母さん。今までありがとう」 俺は自然と笑顔になっていた。 頬には涙の通った後が綺麗に輝いていた。 「……どう、いたしまして……」 母さんも返事をして、綺麗な涙を流した。 「……それじゃあ、大我……」 「……グスッ……うん……」 「いってきます」 「いってらっしゃい」 俺がそう答えた後に機械音が永遠と鳴り響いた。 その音は俺の心まで響いて、俺は耐えきれずに立ち尽くしたまま声を出さずに泣き出した。 俺の頬を伝って落ちた涙は、握っていた母さんの手の上に落ち、そのまま流れて行き、母さんの指に填まってある結婚指輪に当たった……。
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