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ガタン、と扉を開ける音がして入って来たのはつるのさんだった。
怪我してない方の手をひらひら振りながらおれの隣の席に座った。
「まぁた宝払いか?」
「悪ぃかよ…」
「言ってんでしょ?詐欺だって」
「前から思ってたけど詐欺って何?」
「えっ、もしかしてゆーちゃん、知らずに怒ってたの?」
分からなかったから聞き返したのにこのオッサン、腹を抱えて笑い出した。
詐欺ってのはねぇ…と説明を始めたと思ったらすぐに黙って眉間にたくさん皺を寄せた。
「あ~…、だめだボキにはわかんねぇ」
分からねえのかよ!ってツッコミを入れたくなったけどぐっと堪えた。
「まいちゃん、お酒用意して?」
「はぁい」
店内はいつの間にかろっけん海賊団でいっぱいになっていた。つるのさんが、お前等遠慮せずに飲めよー!と言うともう宴会だ。
ま、おれもこれに便乗して食べちゃうんだけどね!
こうなるとまいも忙しくなっちゃうからつまらないんだよね。つるのさんはつるのさんで蝉の話をずっと話してるし…。
正直………ウザイ。
はぁ、とため息をついているとつるのさんとは反対側に誰かが腰を下ろした。
反射的に顔をあげると、
「サッキー!」
「どうしたの?ゆーすけ君」
サッキーはつるのさんとこの副キャプテン。頭がめっちゃ良くてクール。つるのさんとは正反対!
あ、でも二人とも優しい。これだけは似てる、いや意外に二人とも似てるとこ多い。
ちらっと遠慮がちにつるのさんの方を見ると、サッキーは納得したように頷いた。
「あぁ、あの人蝉のことになると、キモいオッサn…情熱的になっちゃうから」
「ちょっと、今キモいオッサンと言おうとしてたでしょ!」
あ、つるのさん聞こえてたんだ。
「そんなことないですよ」
「うそおっしゃい!言いかけてたけどあれほとんど言ってたよ!?ンのnまで言ってたでしょーよ!」
二人の漫才のようなやり取りに面白くて笑ってしまった。
そうしたらつるのさんはゆーちゃんも笑ってないで何とか言ってよ、と言ってたけど聞こえない振りをしていた。
いつものようにこんな時間が過ぎて行くと思ってた。
アイツが来る前は………。
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