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ある日、夏歩の容態が急変した
医者たちが急いで夏歩を
手術室へと運ぶ
「はあ…は…ッ」
「夏歩!!夏歩!!!」
苦しそうに息をする夏歩に
オレは手を握って
声を掛けることしかできない
それが悔しくてオレは
唇をギュッと噛み締めた
「…そ…ぅ、あた…しッ」
「夏歩…!!頑張れ…ッ!!」
「…あた、し…死にた…くなぃ…ッ」
「……ッ」
初めてだった…
あの日以来夏歩が
こんな風に弱音を吐いたのは
「死にたくないよ…ッ蒼…」
ポロポロと涙を零して
何度もそう訴えた
その姿にオレも自然と涙を流した
オレの中の一つの感情が
溢れ出たんだ
失いたくない、夏歩を…
他の全てを失っても夏歩だけは…
「…大丈夫…、大丈夫だから…ッ」
やはり今回も
それしか言えなかった
そして夏歩は
手術室へ入っていって
オレは一人
夏歩が戻ってくるのを待った
しかし夏歩は戻らなかった
二度とは戻っては来なかった…─
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