夏音

7/8
前へ
/46ページ
次へ
  時はきっと 僕の中の 引き出しから君をさらって あの温もり あの優しさ あのときめき 行かないで どうか 行かないで… 夢中で駆けた 二人のページから 君の思い出ばかり 溢れ出て そっとそっと 扉を開ければ あの日 あの時と同じで ──── 悲しい思い出に浸っていたオレは ふと引き出しに目を向けた そしてその中から ある物を取り出して あの公園へ向かった 公園へ着くと あの頃のようにブランコに座る 「夏歩…」 夜空を見上げれば あの頃と全く変わらない星たちが キラキラと輝いていた ただ違うのは いつも隣ではしゃいでいた君が いないってことだけ だけどそのせいで こんなにも夜空が嫌いになる 空を見るのが嫌になって オレは隣に置いた物を見つめた あのアルバム…─ パラパラとめくれば 懐かしい二人の笑顔 そして懐かしい文字 何も変わっていない、 あの頃見た物と… もう写真が増えることはない わかっているのに… 何故こんなにも悲しいのだろう 「夏歩…ッ」 呟いた瞬間 ブワッと強い風が吹いた 暖かくて優しいその風の中に 一瞬夏歩の笑顔を見た気がした… 風が完全に消えると もう一度オレは手元に 視線を落とした 「…!!こ、れ…」 そこには今まで見たことのない ページが開かれていた 見た瞬間涙が溢れ出す アルバムをギュッと握り締め ひたすら夏歩を想う 「かほ…ッ」 そこには高校時代 まだ夏歩が元気な頃の 二人の写真と 夏歩からの一言 『精一杯生きた証のような恋でした』  
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加