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「えー掃除? そんなのやってたら時間なくなるじゃん。佐伯にやらしときゃいいの」
端の友人がぎゃははと笑いまぜっかえす。
「あんたって悪い奴」
彼女は覗いていた携帯型鏡をぱちんと音をたてて閉めた。
「あたしは強制してないよ。ね、佐伯(さえき)。
やってくれるよね」
穂高千奈美(ほだか・ちなみ)の流し目は魔力だ。
自分たちが魅力的だと知っている娘たちの中、ひときわはつらつとして輝く女王様がふりかえった。
佐伯信二(さえき・しんじ)はびくっと身体を震わせて、姿勢を正してすっとんきょうな調子で叫んだ。
「い、いいよ。……もちろん。
僕、掃除好きだし」
大人しい男子は笑顔をこねくり出した。
そして言わなくていいことを二度言った。
「ぼ、僕、掃除好きだし」
「佐伯。お前イイ奴」
おざなりのご褒美の台詞を言い終わる前に彼女は男子に興味をなくしていた
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