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「待って・・・待って、信二くんっ」
信二は降りてきた階段を振り返った。
三段上の階段には、小寺清海がいた。
「待って・・・ハア・・・」
息を荒くして、清海は体を折り曲げ、膝に腕をおいた。
「どうして何も言わずに出てっちゃうの?
みんな、信二くんどうしたのかなって心配してたよ」
信二は拒絶の光を瞳に浮かべて、清海を見つめた。
「それは確実に嘘だよね。あの前のほうの人たち、僕のことなんか見ちゃいなかったじゃないか」
清海はうぐっとつまった。
「で、でもそれは、信二くんのほうから心を開かないから・・・っ
信二くんの居場所はあのファンクラブなんだよ?
どうしてそれがわからないの」
「・・・・・・・・・」
信二はただ黙っていた。
そして、ようやく薄い唇を開き、三段上にいる清海を見上げた。
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