階段で

2/5
前へ
/388ページ
次へ
「待って・・・待って、信二くんっ」   信二は降りてきた階段を振り返った。   三段上の階段には、小寺清海がいた。 「待って・・・ハア・・・」   息を荒くして、清海は体を折り曲げ、膝に腕をおいた。 「どうして何も言わずに出てっちゃうの?  みんな、信二くんどうしたのかなって心配してたよ」   信二は拒絶の光を瞳に浮かべて、清海を見つめた。 「それは確実に嘘だよね。あの前のほうの人たち、僕のことなんか見ちゃいなかったじゃないか」   清海はうぐっとつまった。 「で、でもそれは、信二くんのほうから心を開かないから・・・っ  信二くんの居場所はあのファンクラブなんだよ?  どうしてそれがわからないの」 「・・・・・・・・・」   信二はただ黙っていた。 そして、ようやく薄い唇を開き、三段上にいる清海を見上げた。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1431人が本棚に入れています
本棚に追加