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信二は声に驚き、振り返った。
目の前で、清海がバランスを崩している。
それがスローモーションのように緩慢に見えた。
このままでは、彼女が階段から落ちてしまう――
信二は落ちてくる身体に反射的に手を伸ばした。
「小寺さんっっ!」
信二は両手で清海を背中から抱きしめるようにとらえた。
ずしり、と両手に体重が加わるのを、歯を食いしばってこらえた。
ずりっと自分の足もすべり、
「いっ!?」
後ろへ片方の足を下ろし、決死の思いでふんばった。
(あぶ・・・なーっ・・・・・)
どうやら止まったようだ。
彼女の胸から上が完全に傾いでおり、両足がぶらんと空中に揺れている。
その様子を、冷や汗とともに見守った。
「た・・・」
清海の声はうわずって聞こえた。
「助けてくれて・・・アリガト」
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