二章

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「その泣くのを我慢する癖も、変わらないですね」 柔らかく、そして囁くような言葉で遂に糸が切れた。 銀時は立っていた新八を突き飛ばすように松陽の側に行き、その大きな胸の中に飛び込んだ。 その拍子に机に置いてあった湯飲みが床に落ち割れた。 「せ……先生ぇ……松陽先生ぇえ……!!」 我慢を押し殺していた声を解放するように銀時は大声で松陽の名を呼び、泣いた。 「ずっと会いたかった……会いたかった……!!」 「私もですよ、銀時」 泣きじゃくる銀時に戸惑う事なく松陽は銀時の背中に腕を回し、優しく撫でた。 新八はその光景が親の胸の中でたくさん泣く子供に親があやす姿と重ねた。 (こんな銀さん……初めて見た……) 胸の中で泣いていた顔を上げ鼻を啜る銀時を見て、何故だか自分の知らない人間、また遠い人間のように思えて仕方がなかった。 そんな銀時を見ていられないのと、銀時のどこか安堵した顔を見て新八は突き飛ばされた胸に手を当て俯いた。 (銀さんとあの人の間に、僕達の入る隙間はないや……) 胸がグッと痛くなるのを感じた。 新八はその痛みを無駄だと知りながらも手で押さえ込み神楽を呼んだ。 「神楽ちゃん、ちょっと出ていよう」 神楽も複雑な顔を浮かべながら二人を見ていたが、小さく「分かったアル」と言って長椅子から立ち上がった。 そのまま二人は居間の外へ出て行った。
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