一章

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倒れている人物の体に手を置き、死んではいないかと確認をする銀時。 その人物は息をするように上下に体を揺らし、そして散らばった長い髪を銀時は掻き分け首もとに手を当てる。 (脈はまだあるな……) けれどどの位この寒気の中にいたのだろうか。 触れてみた手は冷たく、このまま放置していたら凍傷してしまうかもしれないと危惧する。 銀時はそう考えた末その人物を起こす事にした。 「おい、アンタ大丈夫か?」 ユサユサと体を揺すってみる。 「……ん」 「ああ、良かった。意識があるみたいですよ!」 反応を示した人物に嬉しそうに笑う新八を横目で見ながら、銀時は続けて体を揺らした。 「アンタこんな所で寝てたら風邪ひくぞ。寝るんならもっと暖かい所で寝たらどうだ?」 幸い意識を取り戻したその人物は銀時の呼び掛けに声を上げる。 しかしその声を聞いた銀時は瞬間、我が耳を疑った。 「……わ、私は……」 「……え……」 ピクリと肩を揺らす銀時に気付く事なく、その人物はゆっくりと傷付いた体を起こした。
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