一章

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――ドンッ 一瞬何が起こったのかを理解する事が、銀時にはできなかった。 けれど冷たい雪の上に腰を打ち付けた事でようやく起きた事に理解した。 吃驚したように立ち尽くす松陽とそれを呆然と眺める銀時。 混乱のせいか、それとも恐怖のせいによって銀時は抱擁する松陽の腕から逃れるように突き放したのだ。 何故恐かったのか。 銀時は自ら突き放した両手を見た。 貴方が、松陽先生が死んだ事を思い出したから? あの時の恩師の亡骸が残像のように浮かんだから? それとも…… 救えなかった事を、己の罪に脅えたから? 色々な感情がグルグルと奔流のように渦巻く胸中が顔に表れたのだろうか。 松陽は困ったように、けれど安心させるように優しく微笑みながら銀時の側にしゃがみ込むと手をとった。
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