序章

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世界は何色にも染まっていない、純白で覆われていた 空気は肌を突き刺すような寒さと吐き出す息の白さ、そして風を切る音 煌めく銀色の弧が雲の隙間から顔を出す太陽によって、眩しい程の反射を俺の瞳にぶつけた ほんの一瞬の出来事だった 何が起きたのかさえすぐに理解する事はできなかった けれど己の双眸に映されるは鮮明な 赤、赤、赤 ……何が起きた? 真っ赤な雪の上に転がる恩師の頭と胴 俺の隣で旧友が叫び声を上げている その絶叫と目の前の光景に俺の中で絶望という二文字が駆け抜けていった それと同時に既視感のように重なる俺の母の最期 けれどそれ以上に悲しみと怒りが心の奥底からこみ上げてくる 膝を雪の積もった地面に付け拳を雪ごと握り締めた 冷たい、いや痛い 手がじゃなく、心が ……ああ、これは貴方と共に過ごした時間がこんなにも長くて、それでこれほどまでの残酷を味わうのか 許せない 幕府が、いや何より貴方を守れなかった自分自身が 許せなかった…… 【序章】了
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