二章

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「どうぞ」 緑色に色付いた茶が注がれた湯飲みを松陽の前に置く。 コトリと陶器が机に当たり軽く音が鳴ったが、それが音一つない居間によく響いた。 「ありがとうございます。えっと、君は……」 松陽が少々困ったように見つめてくる意図を察した新八は、「あ、自己紹介がまだでしたね」と苦笑した。 「僕は志村新八と言います。それでそこに座っている女の子が……」 「神楽アル」 己の名と神楽の名を綴ろうとした時、神楽が先に名を名乗った。 「新八さんに神楽さんですね。銀時とはどういう関係なんでしょうか?」 それはこちらも聞きたかったが、問われたため答えた。 「万事屋という仲間……いえ、家族です」 「家族ですか、フフフ。銀時はいつの間にこんな幸せな家族ができたんですか?」 コロコロと子供が笑うような笑みを浮かべながら銀時に問う松陽。 だが銀時はそれに何も答えようとはしない。 いや正確には答えるほどの動揺がまだ静まっていないのだ。 けれどそんな事など知らない新八と神楽は訝しむように銀時を見る。
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