二章

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「良い事が起きる、ですか?」 新八の言葉に松陽は満足げに頷いた。 「その通りです。古来から茶柱が立つとその者に吉兆を齎すと言われています」 ゆっくりとした動作で湯飲みの側面を指でなぞる松陽の顔は、幸せを噛みしめた表情だ。 「コレが立つという事は、やはり私と銀時の再会は私にとってとても幸せな事なんでしょうね」 銀時との再会、その言葉を聞いて新八はハッと自分がこの人物に問いたかった事を思い出した。 「あの、松陽さん」 「はい?」 「先程からずっと聞きたかったんですが……銀さんとはいったいどういう関係なんですか?それとその傷と刀は……」 紡ぎながら視線は銀時に向けられ、続いて松陽の体と刀に向けた。 銀時とは何かしらの関係なのは分かるが、その身形と刀には疑問が湧かずにはいられない。 この廃刀令の御時世、真剣を帯刀しているだけで捕まるというのに、松陽はその刀を所持していた。 またボロボロの身形と傷と銀時の知り合いという関係性を考慮すれば、攘夷浪士か何かだという思考に当たってしまう。 けれど松陽の溢れ出す雰囲気からして攘夷浪士には到底思えない。 ならばいったいこの人物は何者だろうか。 新八だけでなく神楽もその事を思っていたらしく、机に身を乗り出して耳を立てた。 「私と銀時の関係ですか?そうですね、簡単に言えば先生と教え子です」
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