二章

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「……あれは何年前の事でしょうか。その頃は攘夷戦争の後期の頃です」 松陽の大きな手に収まる湯飲みの茶が波打った。 当時は幕府が強大な天人の力に平伏し、侍達をあっさり見捨て国を開国しました。 そのため私は開国を反対する主戦派の一人として幕府に追われる身でした。 その頃私は自分の教え子達を戦場に行かせてしまいました。 己の思想を教え子達に託して。 銀時もその内の一人でしたね。 当の私は情けない事に教え子達を戦場に送り出しながらも、一人おめおめとある廃屋に身を潜めていました。 なんとも不甲斐ないばかりです。 教え子達が次々と戦場で死んでいくという凶報を受けた私は自分の無力さに歯噛みしました。 そんな血塗れた戦渦の中、ある三人の教え子が生き抜き、ちょくちょく私の元へやって来ました。 その三人は、 “坂田銀時” “桂小太郎” “高杉晋助” です。 死んでいく教え子達の中でもこの三人が生きているだけでも私は救いでした。 しかし、凶事とは続けて起きる事が不幸な事でした。 私が隠れていた廃屋が幕府の者に見つかってしまったのです。 幕府は私を捕らえた後、座敷牢に幽閉をしました。 そして幾年の月日を、私はその牢で過ごし、彼等の隙を突いて脱獄しました。
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