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――ガタリッ
水が水面に落ちるように淑やかな声で説明をしていた部屋の中で、机に何かが当たる音が鳴った。
音の原因は銀時が長椅子から勢い良く立ち上がった事で、膝が机の端にぶつかったのだ。
「……銀ちゃん、どうしたあアル、カ……」
「銀さ……ッ」
新八がどうしたのかと銀時に声を掛けようとした刹那、言葉を詰まらせた。
それは神楽も同様で、二人で銀時の顔をジッと凝視した。
二人に見つめられる銀時の顔はこれでもかというぐらい目を見開き、カタカタと肩を震わせていた。
だが二人が戸惑ったのはそれが理由だからではない。
今まで見てきた銀時の嬉々、悦楽といった感情から激しく逸脱した感情が顕現していたからだ。
その感情は言うなれば“怯え”と“絶望”だった。
肩だけに留まらず、震える唇を一度閉じてもう一度開く。
「……おかしいだろ、それ。……だって松陽先生は……松陽先生は……幕府の奴等に捕まった後、あの雪の積もったあの日に……」
徐々に小さくなっていく声。
けれどそれもほんの一時、銀時は意を決したように、悲哀に瞳を揺らしながら言った。
「……あの時……俺達の目の前で……殺されたんだ!!」
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