二章

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「それはですね、幕府……というよりは天人の齎した薬の影響を受けたからでしょう」 意味が分からない。 松陽を除く三人が疑問に思っていると、続けて松陽が言葉を紡いだ。 「幕府は今の時期、天人を廃する為に攘夷活動を行う組織……テロリストとでも言えばいいのでしょうか。その者達に主戦派だった私が攘夷を止めるように説得させる為に今の姿を保ち生き長らえさせていたようです」 松陽は手にしていた湯飲みを机に置き、ボロボロの衣服の袖を捲って見せた。 痩せて色白、そして傷だらけの腕には針で刺された黒みを帯びた青痣のような痕が幾つもそこにあった。 色が白い分だけそれがよく目立つと新八は心の中で思う。 「私は毎日牢の中で何かしらの薬を打たれ続けてました。その結果、こうして当時の姿のままでいるというわけです」 袖を戻し、再び三人に視線を戻す松陽。 「そしてテロ活動が躍起になった今、テレビという道具を使い世界に向けてテロ活動を止めるように言う為、私は牢から出されました」 そこで視線を傍らに置いてあった刀にやり、白く長い指で刀の鍔の部分をなぞった。 「主戦派で有名だった私なら攘夷派の方達も顔が分かっていると思ったのでしょう。……そして先程も言いましたが、牢から出された私は隙を突いて警備の者の刀を奪い脱獄し、行く宛てもなく外に飛び出し行き倒れになりました」
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