一章

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「お前みたいな駄眼鏡にはこうしてやるアル!」 神楽は道に積もってある雪で雪玉を作るとそれを次々に新八に投げつけた。 「いた!痛いよ神楽ちゃん!」 両手に買い物袋を抱えた状態の新八には応戦する事もできず、ただ神楽の雪玉から逃げるように道を右往左往と走る。 「待つアルーー!」 それを追いかけるように走りながら雪玉を投げつける神楽。 その二人の姿を銀時はため息をつきながらも笑みを浮かべ見つめた。 ……冬、いや雪は嫌いだ。 寒くて冷たいのは何より、あの時を……あの瞬間を彷彿とさせるからだ。 凍てつく氷のようなあの瞬間を。 思い出したくない、でも覚えていなくてはならないあの時を。 ――バシャ それは真っ白な雪の上に飛び散った真っ赤な血に。 あの時恩師の頭と胴が切り離された時に飛び散った血と酷似していた。 嫌だ、見たくない。 見たくない……!! 「あちゃー、こんな所にペンキが置いてあったよ」 小さな店の壁際に置かれた赤い色のペンキ。 それが新八が走り回り蹴ってしまった事によって零れた真っ赤な真っ赤な鮮血のような紅。
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