一章

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重い灰色の雪雲が空を覆う。 元々曇り空だったのだが、先程にも増して雲が厚くなった気がする。 今にも結晶を纏った雪が降り出しそうな天気に、銀時は不快そうに眉を寄せ空を見上げた。 (結野アナ今日は晴れるって言ってたのによ……) 季節は冬なので夏のように燃えるような暑さなどは期待していないが、この忌まわしい雪を溶かしてくれないだろうかと淡い希望を持つ。 だがそれもかぶき町に舞い降りた薄暗さによって儚く消えていった。 今の季節たとえ溶けたとしてもいずれはまた数日後には雪は降り積もる。 降らなかったとしても来年にはまた今年のように雪は降る。 地球温暖化が叫ばれてるこの世の中だが雪はこうして毎年降り続けるのだ。 地球の気温が上がっても構わないから、だから雪だけはどうか降らないようにならないだろうか。 「……ハァ」 そんなどうしようもない思考に呆れると、自然にため息が出た。 靄のような白い息が口から吐き出され空気中に霧散していく。 「どうかしたんですか?」と、新八が不思議そうに問うてくるのに軽く笑みを浮かべながら「いや」と答えれば、事務所兼我が家が見えてきた。 モヤモヤする気持ちを心に抱えながら万事屋まであと少しの距離を足早に歩く。 「……あ!」 すると前方を歩く神楽が万事屋に向かって指を差しながら声を上げた。
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