ぼくと昔話

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  「か、火事だ!!」 炎なんてガスコンロかアルコールランプ、せいぜい焚き火くらいしか見たことがなかったぼくは、慌てふためいて叫んでしまった。 「よく見ろ、火事ではない。 あれは鬼火じゃ。 神社が燃えているわけではない」 押し殺したようなポチの低い声に、ぼくは少しだけ落ち着きを取り戻してまた炎を見つめる。 よく見てみると、炎の向こうに神社がシルエットを残してまっすぐ立っているのが見える。 「じゃあ、あれは一体?」 「鬼火は現実の炎ではない。 家や人などの物体を焼くことはないが……、わしのような霊体や人の魂を焼き尽くす炎じゃ」 赤、黄色、青、白。 炎が目まぐるしくその色を変え、メラメラと燃えたぎる。 「じゃあ、人間があの火に焼かれたら……」 「善良な魂は黒い邪(よこしま)な魂に変わってしまう。 この神社のご神体も神通力を失ってしまうじゃろうな」 ポチはご神木の桜の木を見上げながら寂しそうに言った。 白い身体が炎に照らされてオレンジ色に見える。  
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