ぼくと昔話

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  焼けた苦い臭いが辺りに広がり、空気が灰色に濁る。 「ウゲホッ、フゴッ、ウニャ、フゴホッ!」 ええーっ!? 何も起きてない! ぼくの目の前で、白猫がかなり大げさにむせていた。 その背後では鬼火に焼かれるご神木がパチパチと音を立てている。 「馬鹿者! そのままふりかけてどうする! お主の知っとる花咲か爺さんはただ黙って灰を振り撒いておったか?!」 「え?」 「言ったじゃろう、佐吉のように、花咲か爺さんのように灰を撒けと!」 ポチはくしゃみを連発しながらぼくを怒鳴りつけた。 「唄を歌うんじゃよ! 呪文に言霊、神通力の形は数あれど、その根底にあるのは音じゃ! 神社の祝詞(のりと)や坊主のお経を思い出せ。 節がついちょるじゃろ。 あれは神道や仏教の呪詛を音に乗せとるんじゃ」 「知らねーよそんなの! 最初にちゃんと言えよ!」 ぼくはポチの偉そうな物言いにイライラして怒鳴り返してしまう。 その直後、ぼくは突然飛びかかってきたポチによって地面に突き飛ばされてしまった。  
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