ぼくと昔話

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  背中に感じる地面が酷く冷たい。 真冬の真夜中だもんな…… 「いきなり何すんだ━━」 物思いからさめて怒りもあらわなぼくをポチが遮る。 「下がっておれ。 まさかこうも後手後手に回るとはのう」 ポチが頭を低くして威嚇するように唸り声をあげる。 どこかでブンブンと耳障りな破音が聞こえる。 それは、ぼくとポチの真正面から発されていた。 「穂白(ほじろ)、お前も随分とこじんまりした身体になったじゃないか。 全身真っ白だぞ? 自慢の毛並みはどうした?」 「相変わらずうるさいことよ、黄面(きめん)の雑兵め」 甲高い耳障りな声が笑い、それにポチが答える。 ポチの視線の先には、人間ほどの大きさの黄色い仮面のような顔をした蜂。  
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