ぼくと昔話

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  「強がるのもそこまでにしておくんだな。 背赤姫(せあかひめ)様は既に産卵の支度に取りかかっている。 そんな身体で我らに太刀打ち出来るとでも?」 黄面蜂が嘲笑うように言う。 「背赤の好きにはさせん!」 ポチが蜂目掛けて飛びかかり、鋭い爪を突き立てる。 しかし、その一撃は高速で振動する羽根によって弾かれてしまった。 「笑止! そのような貧弱な身体で我らに歯向かうとは!」 蜂が大きく口を開け、火の玉を吐き出す。 ポチの身体がたちまち鬼火に包まれ、苦しそうに息をついている。 「ポチ!」 「触れるでない! お主まで力を喰われるぞ!そんなことよりはやくご神木の灰を撒くのじゃ! わしの力を解放することが出来るのは桜木佐吉の子孫であるお主だけじゃ!」 叫ぶポチの真っ白い身体が赤々と燃えている。 ぼくは、震える手のひらにグッと力を込め、一歩踏み出した。  
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