ぼくと白猫

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  そこにはやけに年寄りじみた表情でぼくを見つめる、二足歩行の白い猫がいた。 「こっ、こっ、こっ………」 「鶏の真似はいいからわしの話を聞け、桜木ナオキ」 コーイチだと思われる白い猫が口を開く。 猫独特の鼻の下で2つに割れた口元をモゴモゴ動かし、器用に人間の言葉を吐き出す。 これは夢か? あるいは幻覚? とにかく信じられない。 ぼくが自分の頬をつねろうとした時、コーイチはそれを遮るようにして繰り返した。 「ナオキ、うぬらの世の理(ことわり)では獣がヒトの言葉を話すのは奇怪やもしれん。 しかしの、今わしはこの猫の身体を借りてうぬに話しかけておる。 ひとまず猫に化かされたと思って話を聞いてくれんか」 コーイチの身体を借りた何者かが言う。 こいつの言葉を信じるとするならば、だが。  
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