序章

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ミリンダ王はインドのサーガラにいて、論客として近づき難く、打ち勝ち難く、種々なる祖師のうちで最上者であると言われていた。 彼は比丘(出家者)のサンガ(仏教教団)に近づいて、形し上学的論議によって質問を発しては、比丘のサンガを悩ませていた。 困ったサンガの代表者は天帝インドラに訴えた。 するとインドラは、 「尊者よ、そのミリンダ王こそは、〈天界〉から去って人間に生まれた者です。」 と、いった。 そこでインドラは比丘の大衆を先頭にして天宮にはいり、マハーセーナ天子を抱いてこういった。 「あなたよ、比丘の大衆は、あなたが人間界に産まれることを懇願しています」 「尊者よ、わたしは〈苦〉に満ちた人間界を望みません。人間界は痛苦の〈ところ〉です。尊者よ、わたしは、ここ天界において次第に上界に生まれ変わって、そこで死をまっとうしたいのです」 と、〈天子マハーセーナは答えた。〉
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