Prologue

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『………太………! …………!』 『……………君っ!!』 『……っ……!』 色んな人の声がとぎれとぎれに聞こえる。 少し湿った声。 真っ暗な闇の世界。 何で暗いんだろう……。 どうして色んな人の声が遠いんだろう……。 ――――――――――あぁ、分かった。 これは夢なんだ。 夢なら目を覚まさなきゃ。 目を開かなきゃ。 ゆっくりと瞼を開く。 「…………ぅ……っ…。」 当然目に飛び込んで来る、明るい光、白い天井。 鼻をつくのは消毒液の匂い。 此処は………、 『……孝太先輩?!』 『孝君っ! 分かる!? 此処は病院よ!』 涙で濡れた知り合いの顔。 それが病室の至るところにあった。 ピッピッと機会音が僕の鼓動を知らせているのが耳に入った。 『良かった…孝君の目が覚めて……。』 …………頭が痛い。 いや、頭だけじゃない全身が痛い。 『孝太先輩は事故に遭ったんです。覚えていますか?』 …あぁ、そうだった。 横断歩道を渡っていたらトラックがいきなり突っ込んで来たんだ。 それで病院にいるのか……。 『もう目が覚めない可能性もあるって先生がおっしゃってたの。でも孝君は目を覚ましてくれた…。』 会社の先輩がメイクが落ちるのも構わず、ボロボロと涙を溢す。 僕は先日この人に告白された。 本当に僕を思ってくれているんだなぁとたった今、やっと感じた。  
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