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号泣してしまった気恥ずかしさと、デートという響きの緊張感。
そんな雰囲気から逃れたく、下らない話をべらべらと必死に喋る。
寛人さんはそんな私に優しく微笑み、相槌をうってくれた。
こんなふうにテンパってる部分さえ、嫌な顔ひとつもせず受け入れてくれている。
それが嬉しくて、くすぐったくて、優しくて、凝り固まっていた心が段々ほぐれて行く。
「万里ちゃん」
低めの甘い声で呼ばれた、それだけで心臓がキュンと締め付けられる。
この間までは平気だったのに。
「か、観覧車……近づいてきましたね」
大型ショッピングセンターの一角にあの観覧車があった。
遠くから見ていた時よりも大きくて迫力がある。
カラフルなゴンドラが愉しげにみえて、自然と心が弾んだ。
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