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ショッピングセンターの駐車場が見えてきた。
車をそこに停める事にした。
駐車場に入り、いざガレージに停めようとする。
しかし車が思うように動いてくれない。
ハンドルをどうきればいいのかわからなくなり、半パニックに陥る。
「アカン!擦る?!」
寛人さんが手をハンドルに添えてくれた。
「ブレーキを離して……ギアチェンジしようか」
バックにいれて、ブレーキを離すと寛人さんがハンドルを器用に捌く。
腕を動かすと寛人さんとの距離が縮まり、あまりにも綺麗な横顔に不謹慎ながらときめいてしまう。
「もう大丈夫だよ」
寛人さんの声で我にかえった。有り難うございます、とお礼をして車を降りた。
「気にしなくて良いよ、こちらこそここまで運転してくれて有り難う」
寛人さんは私に手を差し伸べた。
その真意が分からず、困ってしまう。
「この手は?」
「エスコート……させてもらうよ」
嬉しくて目頭が熱くなった。
付き合ってくれるんだ、一日限定の恋人ごっこに。
私はその手をとった。
――レンガ調にあしらわれた店の外観は異国情緒に溢れ、足を一歩踏み入れるとそこは日本でないような錯覚を覚える。
平日ということもありお客の姿は疎らだった。
だが私たちには好都合だ。
一日だけのデートだから。
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