晴天の霹靂

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会社に行くといつもとかわりなく、昨日のことを何かいわれるのかと思えば、そんなこともなかった。 気をつかってくれているんだろう。 ただいつもと同じ雰囲気が有難かった。 外回りの営業組が慌ただしく外へと飛び出していった。 今日社長は、銀行に融資の増額を頼みにいったらしい。 毎月毎月、月末が近くなるとどことなしに雰囲気がピリピリする。 俺が居なくなることで少しでも助かるならそれでいい。 俺と社長、長い付き合いだからわかる。 この会社を守るため。 社長の英断だったのだ。 優しい社長のことだ、辛かったに違いない。 社長は俺にとって親父のような存在だったし、社長も息子同然にかわいがってくれていたから。 社長室のドアを見つめていると、じんわりと目に涙が浮かんだ。 俺も男だ。 最後に何かを残さねば……。
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