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振り向くと忘れもしない。
声の主は、あの日俺の命を救ってくれた、そして勇気をくれたあの女性(ヒト)だった。
「ゴメンなさい、急に声なんてかけてビックリしはりましたよね?」
「あ…………」
彼女の白く華奢な手が目に入り、否応なしにあの時の感触が思い出される、そして強烈な罪悪感に苛まれた。
「あの日から私、リストカット卒業できたんです」
そう微笑んで治りかけの手首の傷を何の躊躇いもなく見せてくれた。
「そう、それは良かった……」
曖昧な返事に不思議そうな顔で俺を見つめると、少し距離をとりながら隣に座って子供達が遊んでる様子を楽しそうにみていた。
その横顔は幼さが混じり、うちの息子とそう歳が変わりないことが伺えた。
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