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なんで俺が…………。
確かにそういう感情がなかったわけではない。
だからといって子供が駄々をこねるような真似はしたくなかった。
俺は大人なんだから。
「俺は会社に恨み辛みを言う気はないよ」
「なんで?」
そういう彼女の目には大粒の涙が溢れていた。
「…………なんでかな?でも不思議と怒りとか感じなかったな」
無言のまま俺にすがるように膝に置いた手に力が入ってるのがわかった。
「君はなんで死を選ぼうとしたんだい?」
俺は核心にせまる言葉を彼女に投げ掛けた。
さっきの言葉はきっと俺に当てた言葉ではない、彼女自身が自身に向けた言葉なんだろう。
「私。あの日結婚式やったんです」
「え?」
彼女は涙を目に溜めたまま、静かに語り始めた。
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