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ふう……何度目かの溜め息が口からこぼれた。
幸村は社長から俺のクビを聞かされたのだろうか。
薄っぺらい壁を眺めてはまた溜め息が漏れた。
はかどらない仕事をもて余すようにパソコンで、ニュースをみていた。
芸能人の離婚話や悲惨な事件や事故。
政治家の闇献金問題。
ざっと斜め読みしてはみるものの、興味がもてずに再び書類整理にとりかかった。
「納得いきません!そんなの横暴です!」
いきなりの怒号に体がういた。
声がしたのは社長室の壁の向こう側だった。幸村はドアを勢いよく開けるとツカツカと俺の傍によってきた。
「神戸さん!こんな不当解雇許しちゃ駄目です!」
息のかかる距離で俺にまくし立てた。
他の外回りから帰ってきたメンバーも俺に詰め寄る幸村に注目していた。
俺はそのいたたまれない雰囲気に耐えきれず、幸村の肩を掴んだ。
「大丈夫だから!落ち着け」
一体何が大丈夫なんだか自分でも分からない、ただこの場をどうにかしなくてはと必死だった。
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