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「あ、ああのっ……」
2月14日、バレンタインの朝。いつも通り予鈴5分前に教室に着くペースでの登校中、聞き覚えのあるアニメ声を俺の耳が拾い、半ば反射的に足を止めその声の発信源を探した。探した、と表現したものの、実際は右を向いただけだが。
同じクラスの出席番号19番。入学式から一週間、18番である俺の真後ろに彼女の席はあったのでそれは確かなはずだ。
確か名前は……。
「こ、これっ!」
2月にもなってクラスメイトの名前がすんなり出てこない俺が、必死にその愚鈍な脳みそに検索をかけていると、彼女は俺とは比べ物にならん程必死に小さな、それでいて色鮮やかにラッピングされた立方体を差し出していた。
隣のクラスのイケメン君に。
「ごめん、いらない」
素っ気ない、簡潔な拒絶。
確かイケメン君は他校に付き合っている子が(それもその学校のミスコン1位)いたので、その行為はたとえ誠意が感じられなくとも責められるものではないのかもしれない。
いや、責められるべきでないはずだ。
だが、
「あっ、う、うん。こっちこそ、なんかごめんね」
そう言いながら走り去ったクラスメイトの瞳が潤んでいるのを見たら、理不尽だろうが負け惜しみだろうが、思う。
(神様、コイツに不幸を!)
その3秒後、イケメン君に微かな不幸が訪れたのは、ただの偶然だろう。
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