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高橋が来店するのは大抵平日の、仕事が忙しくなる月末。
その日は「接待」「残業」の免罪符が与えられているから。
同じ会社にいるが故の抜け穴とも言えた。
結婚式どうでした?
新婚旅行はどこまで行くんですか?
この前の日曜日、奥さんと何かしました?
聞きたいけれど、聞きたくない。
何を知ったところで、彼と彼女が結んだ契約には太刀打ちは出来ないのだから。
「優子」
名前を呼ばれると、胸を切り刻まれる思いだった。
「私は……ユイカです」
出来るのなら、力の限り抱き締めて、何も感じないで済むように閉じ込めて欲しい。
「俺は、お前が欲しいんだ」
高橋の言葉に、心が乱される。
熱を持ち、沸騰する想いが確かに胸の中に渦巻いていた。
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