ねぇ、螺旋の夜を過ごしましょう

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「優子」 甘くそう囁かれ、軽く抱き締められた。 重要なのは「軽く」というコト。 ファンデーションも、香水も、シャンプーの香りですら、移してはいけないから。 背中と膝裏に腕を差し込まれ、横抱きにされる。 ひんやりと冷たいベッドに、掛け布団も剥がさないまま下ろされた。 ぽすん、と身体が一度沈み、跳ねる。 ホテルのすぐ脇を走る環状線からの荒々しい音が、鼓動にかき消されて耳までは届かない。 聞こえたのは肌がぶつかる音と、高橋の声だけだった。
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