ねぇ、螺旋の夜を過ごしましょう

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窓の外から月が見ている。 冷たい光を投げかけて。 優子はベッドの上からただ、いびつな丸を眺めていた。 ふと初めて結ばれた夜を思い出す。 一晩中してくれた腕枕の上では、高橋の温かい鼓動を聞いていた。 しかし今はどうだ。 月の光は冷たく底冷えがして、室内なのに雪が降りそうだ。 欲しかったのは、彼の熱。 触れた瞬間に手を引っ込めてしまうような、それでも尚、触れていたい熱さが与えられていた。 自分のものにしたかったのは、彼の想い。 自滅してしまうほど愚かに、頭の中を自分の存在だけで満たして欲しかった。 どちらも手に入らないと、分かっているのに。
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