一日目 -始まりの電話-

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リビングの大窓を風が撫でる振動も聞こえるけれど、それが実際に真琴の耳に届いて来てるのか、それとも真琴の記憶の中の音なのかは判別がつかない。 まるで、この家全体が風に包まれ孤立してしまったのかと錯覚してしまいそうになる。 人のいない静けさと共に聞こえる風の騒音。 そこに混ざろうとするかのように鳴り響く、不釣り合いな電子音の不協和音。 真琴の手には、その発生源である携帯電話。 二つ折りに閉じられた携帯電話の外側に付けられた小さな液晶ディスプレイ。 そこにおかしな番号を表示させながら、鳴り響く電子音に合わせて画面が明滅する。 真琴は軽く息を飲み込んで、閉じられた携帯電話をぱかっと開く。 中のディスプレイにも、同じくおかしな番号が表示されている。 薄暗くなった玄関に、ディスプレイの明かりが漏れて、いたる所に影を作る。 それを静かに真琴は見つめ――。
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