一日目 -始まりの電話-

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風の強い日。 家の中にいるはずなのに、口から吐く息は僅かに白い。リビングの大窓から見える庭の雑草が、強風に撫でられながら揺れている。 それと呼応するかのように、大窓も小さく振動。 今は一月。冬の風が冷たい時期。 真琴が高校から帰宅し、蛍光灯とエアコンのスイッチを入れてから数分。エアコンの口から暖かい風が吐き出される。 「ふぅ……」 温風が真琴の髪を優しく撫でる。 冷え切った手をそこにかざすと、思わず安堵の溜息が漏れた。 奪われた体温が少しずつ戻ってくるこの感覚は、何度経験しても不思議と心が落ち着いてしまう。 赤いランドセルが無差別にソファーの上に投げ出されているのを確認して、妹――真希(まき)が遊びに行っていることを知る。 いつも、遊びに行く時は鞄くらい部屋に持って行きなさい、と注意はしているが……結局、真琴はソファーの上にある結果に、今度は別の溜息を漏らした。 ランドセルをずらし、真琴はソファーに腰を下ろすとそのままテレビのリモコンを手に取り電源を入れる。
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