一日目 -始まりの電話-

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以来、真琴がニュース番組を避けるようになったのは、仕方のないことなのかもしれない。 ただ、ニュース番組をいくら避けたとしても、悪い情報が入らないわけじゃない。 今の殺人事件も、県内で発生していることもあって、自然と情報の方からやってくる。 人の死ほど悲しいことを知らない真琴からすると、そういった情報を聞く度に遺族の人のことが脳裏にちらつき、心の奥底が仄暗い色に塗り潰されるように感じてならない。 真琴の家族は、父親が故人となって以来、母親と妹の三人でこの家に暮らしている。妹とは少し年が離れていて、妹は小学六年、真琴は高校一年。 母親は家具用品を扱う会社の社員で、今日から三泊四日の社員旅行に出かけている。飛行機での移動じゃないことに軽く胸を撫で下ろしながら、今朝見送った。 ふと気付くと、時刻は五時半を回っていた。もうそろそろ妹の真希も帰ってくる頃だろう。夕飯の仕度も始めなければならない。 身体も温まってきたことだし、と真琴が立ち上がる、その時――。 バタンッ、とドアの閉まるような音が聞こえた気がした。
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