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――七年前。
その日は雨が降っていた。霧のような細い粒が線のように降り注ぎ、酷く視界が悪い。
住宅街からわずかに外れた人気(ひとけ)のない路上に、人影があった。
全身を黒いレインコートで覆っていて、その丈は足首ほどもある。
レインコートは目元に被さり、首には赤いマフラーを巻いていた。
それが口元を覆っているため、顔はほとんど見えない。
数日前、一組の夫婦が交通事故で死んだ。その知らせを聞き、レインコートの人物はここへ足を運んだのだ。
その人物はただ一点を見つめていた。
視線の先には葬儀場があった。黒い正装に身を包んだ参列者たちが数名、列をなしている。
葬儀場の入り口には小柄な女性と、十歳ほどの少年がいた。
おそらく受付をしているのだろう。
女性といってもまだ若い。
その容姿から十代半ばだろうと推測できたが、幼さの残る外見に似合わず、表情だけは妙に大人びていた。
もっと上の年齢にも見える。
栗色の髪を緩く後ろに束ね、物腰の柔らかな所作で参列者たちに頭を下げていた。
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