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そして、そのすぐ横には漆黒の髪の少年がいた。
灰色の瞳をした、一見すると女子と見紛うような器量のいい少年だ。
酷く疲弊した顔つきで、隣の女性と共に、参列者たちに丁寧に頭を下げている。
(あのガキ……)
レインコートの人物は、心の内でつぶやいた。
少年の容姿には見覚えがあった。
正確にはその少年ではなく、少年とよく似た容姿を持つ人物を知っていたのだ。
瞼の奥に鮮明に蘇る、記憶。
それはレインコートの人物を酷く不快な気分にさせた。
少年を見据える眼光が、自然と鋭さを増していく。
ほとんど無意識のことだったが、その冷たい視線から滲み出るものは他でもない、明確な殺意や憎悪だけだった。
少年は振り向かない。変わりに、栗色の髪の女性が顔を上げた。何かを感じ取ったのか、それともただの偶然か、小柄な女性はレインコートの人物を視界に捉えていた。
剥き出しのままの感情が、伝わってしまったのかもしれない。
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