現実主義な彼女。

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「雅、会社の健康診断って何日だっけ?」 パンにジャムを塗りながら、彼女は何気なくそう聞いてきた。 昨日も聞いた癖に。 「今日だよ、今日。だけど僕には関係ない。吸血鬼の僕には」 僕がそう答えると、酷くムッとした顔が返ってくる。 昨日と同じだ。 人間と妖怪の類が仲良く共存するようになってから、結構な年月が経っていた。 今やお互いの社会はほとんど完全に混ざり合い、『妖怪は空想の産物』『人間は食べ物』なんて考え方を持つ人や妖怪なんか存在しない……と、思っていたのに。 「私、貴方の性格も顔も声も全部大好きよ。でも、そのふざけた冗談だけは大嫌い。吸血鬼なんかお話の中の生き物でしょ?」 付き合い始めて五年と八ヶ月。 一緒に暮らして二年と三ヶ月。 今でも彼女は、世界の現状を理解してくれないでいた。
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