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翌日、ヨウは仕事を終えるといつも通り病院に向かった。
(…あれ?)
いつもなら、昊が窓を勢いよく開けて出てくる時間だ。しかし、いつまで経っても出てこない。
(いないのか?)
ヨウは少し気になって、昊の病室を覗いてみる。
(…なんだ、居るんじゃないか)
昊はベットに座っていた。しかし、いつもの昊ではない気がした。
彼の顔にいつもの明るい笑顔がない。俯いて、悲しそうな顔をしていた。
「…」
ヨウは少し戸惑っていた。理由はわからない。
(戸惑う必要なんて、どこにもないのに…)
ヨウはしばらく窓越しに昊を黙って見ていた。
「…あっ」
ようやく顔を上げた昊は、窓の外のヨウを見て、コロっといつもの笑顔に戻った。
そして窓をガラッと開ける。
「よ!今日は遅かったな」
「君が遅かったんだよ」
「そ?あっ!だから心配して覗いてたわけ?嬉しいなぁ!」
昊は本当に嬉しそうにニコニコ笑う。
「ち…違うよ。ちょっと気になっただけで…」
ヨウはあせあせ答える。
「照れんなよ、ヨウ。お近づきついでにあがってく?」
「…断る」
ヨウはいつもの調子で断固拒否する。
「そう言わずにさ。話があるんだ。大事な話」
「…話?」
「そ。お前の仕事に関わる…約束の話だよ」
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