始まりの章

2/12
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
かつて栄えた文明は数限りなく滅び行き、地上を支配する人間は数々の戦争と平和を交互に繰り返しながら進化を続けて来た。 『破壊の民』そう呼ばれたハスタ族も例外無く同じ末路を辿り、時間という名の『毒』に冒され、侵され、犯され、その牙の前には生す術も無く大敗し、退廃し、腐敗した。 最期はハスタ族自らの手でその文明を絶ったという。 秘境『エメラルド』 そこは楽園であり、地獄に最も近い場所。 大陸に住む人間は、幼い時から御伽話のように言い聞かされる。 それは時に夢物語として。またある時は子供を叱り付ける時の戒めとして。 「エメラルドにはね、国立図書院の図鑑にも載っていない幻の果物や希少動物保護区でしか見られないような生き物が、たっくさんいるんだよ?!」 「エメラルドにはな、目玉が顔中にあって口は手や腹や背中にあってその口には無数の牙が生えている凶暴な化け物が棲んでるんだ。その化け物はエメラルドの奥地に棲んでいて、腹が空くとそのあたりにいる動物、そこらじゅうに生えてる草花、何でも手当たり次第に喰っちまう。…ぼーず、悪さする子供はな、王国の警備兵がエメラルドに連れてって、子供を奥地に置き去りにして帰っちまう。…化け物の餌にするためだ。悪さする子供には罰があるんだ。恐ろしい恐ろしい罰がな。…ま、そんなワケで、悪さしたらお父ちゃんもお前を警備兵に突き出さなきゃいけなくなっちまうから、くれぐれも悪さなんかすんなよ?…よし、良い子だ」   「…エメラルドには、エメラルドでしか生きられない人間が居るのです。その者らは、太古の時代に栄えた文明の末裔で様々な知識を有しているといいます。星の読み方や自然の摂理とその利用法、果ては死者を蘇らせる秘術まで…。まぁ、確かめようの無い言い伝えですがねえ。…その人間達に興味がお有りですか?…良いですよ。時間はあります。もう少しこの人間達についてお話ししましょうか。かつて破壊を司る神を信仰し、『破壊の民』と呼ばれたハスタ族の末裔、ハスタの民のお話しを…」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!