~序章~

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熱い… 体が燃えるように熱い… 血管の中に、溶けた鉄を流されている錯覚を覚える… 焼かれているのか? いや…違う…。 辺りは、薄暗く… 木と木の隙間から月明かりが照している。 村だったこの場所は、今や自分1人。 足元には、割れた硝子がパキパキと音をたてていて 炎は、どこにもない…。 熱い…熱い…熱い… 気持ちの良い夜風が吹いているはずなのに… 冷めることはなかった。 『パキ…』 ふと…目の前には、黒いコートを着た背の高い男が立っていた…。 「……………。」 何を言っている? 聞こえない…。 「な……は……な…だ?」 今度は…微かに聞こえた。 まただ… また、体が熱くなった…。 「もう一度聞こう。お前の名前は?」 今度ははっきり聞くことができた…。 だが…世界は、ゆっくりと傾きはじめた。 自分が倒れた事に理解するのに数分かかった…。
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