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ーーどうしよう・・・・
後ろの列から咳ばらいが聞こえたので、雄太はATMの前から離れた。
通帳を手に二ノ宮金次郎のように歩く雄太を、入口に立った警備員が不思議そうに見たが、当の本人はそれに気付くはずもない。
そんなことよりも、これからの生活をどうするかということで、雄太の頭は一杯だった。
冷房の利いた銀行を出ると、むっとした熱気が固まりになって頬を撫でる。
6月だというのに気の早い太陽が、強い日差しでアスファルトの路上やコンクリートの壁を照り付け、人々の体から上着を剥ぎとっていた。
ーーせめて、この太陽くらいは自分に優しくなっても良いのではないだろうか。
愚痴のようにそんなことを思ったが、それでも当然太陽は変わらず、雄太にもその日差しを平等に投げかけてくる。
特にやることも無かったが、エアコンの無い部屋に戻ることを考えると憂鬱になった。
日差しが弱まるまでの間、しばらく街を歩いて時間をつぶすことにした。
歩いていると、すぐに首筋に汗が浮かんで来た。
チェックシャツを脱いでTシャツだけの姿になったが、それでも汗が止まる気配はない。
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