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ロアの優秀な白魔導師たる由縁は母親ミリアから来るものであった。
ミティを拾って育ててくれたミリアはロアの母親であり、町で一番の白魔導師であった。
その優秀さを買われ、ミリアは現在、城の白魔導師育成に力を貸していた。
言わばお城のお抱え医者である。
毎日が忙しいミリアは、なかなか家に帰ってくることは無く、もうずっと家はロアとミティの二人だけの暮らしだった。
ロアはお母さんのような、偉大な白魔導師になることが夢だった。
戦場に出て傷ついた戦士の一人でも多く、命を救う…
そんなお母さんの仕事に誇りと憧れを持っていたロアは、まもなく学校での必要過程を終わらせ、その夢に近づくべく、来年から隣町の医療所での就職が決まっていた。
医療所での実績と経験が認められると、お城に配属される。
それはつまり……
「ロアが…戦場に出る…」
ことを意味した。
ミティはアザだらけの腕をお風呂から出して、ジーっと見る。
「細い腕…」
こんな細い腕ではロアを守れない…
ミティは悔しそうに唇を噛み締めた。
ロアが戦場に出るまでに、ミティは強くなる必要があった。
ミティ…緑の髪の少年はロアを守る為に騎士団に人兵したかった。
その為に虐められながらも、必死に学校に通う…
ミティ…ハーフエルフの少年は、お風呂場の窓から空に光る月を見て、力が無い自分に苛立っていた。
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