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翌日、蔭刀は目を覚まし寄り添って寝ている奈落を見て微笑んだ。
「な…らく…」
「……ん…」
蔭刀が名前を呼ぶと奈落はうっすらと目を開け蔭刀を見た。
「かげ…わき…」
奈落はゆっくりと身体を起こすとそっと蔭刀の頬に手を添えた。
「もう、大丈夫なのか…?」
「あぁ…ありがとう……ごめんなさい…」
しおれる蔭刀に奈落は苦笑するとそっと口付けた。
「お前が無事なら、それでいい…」
「奈落っ……うぅ~」
嬉しそうに首に腕を回してくる蔭刀の華奢な身体を抱き締めると奈落は少し真面目な声色で言った。
「蔭刀…」
「うん?」
「お前はわしの道具などではない…」
「奈落…?」
自分の顔の横で蔭刀が首を傾げるのがわかる。
(聞こえて…いなかったか……)
「なんでもない…忘れろ…」
「…奈落は…優しいぞ?」
どう解釈したのか定かでないが蔭刀はそう言ってぎゅうっと腕に力を込めた。
「くくく…蔭刀」
「うん?」
「わしを優しいなどと…」
奈落も蔭刀を抱き締める力を強めた。
「そのようなことを言うのは…お前くらいだぞ…?」
自分だけということに蔭刀は少しだけ嬉しそうに笑ったのだった。
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