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「…いしだ」
「なんや」
「おこっとる?」
「あたりまえやろ」
「…ごめんな」
「ゆるさん」
「いしだぁ~…」
目を合わそうともしない石田に井上は瞳を潤ませる。
「…なんやねん」
「どないしたら、ゆるしてくれるん?」
「キスしてくれたら、許す」
真顔でそう告げてやれば、井上は顔を赤らめる。
だけど何もしないままで居るわけにもいかず、井上は思いきってちゅ、と触れるだけの口づけをした。
「…そんだけかい」
「えぇっ」
「舌、いれてや」
「うー…っ、」
再び唇を触れ合わせるけど舌を入れることは恥ずかしいらしくて、井上はひどく躊躇っている。
どうしようかと何となく角度を変えたりしていることにじれて、腰を強く抱いて、舌を吸った。
「んっ、んー、んー…」
鼻から息が勝手に抜けていって意識していないのに変な声が出てくる。
やっと唇を離されたときには、井上は息をするのもままならず浅い呼吸を続けていた。
「はぁ、はぁ、はっ…、」
「ゆーすけくん」
そんな状態の井上を気遣うこともなく、石田は井上の顎を細い指で持ち上げた。
「自分からべろちゅー出来なかったんやから、今日は俺んちでお仕置きやんなぁ?」
爽やかに微笑み、告げられて、井上は期待とも恐怖とも判断しがたい感情から身震いした。
「じょーだん…やろ?」
「まっさかぁ。しっかり奉仕されてくださいな、ご主人サマ」
潤んだ井上の目尻に優しいキスをして、石田は婉然と笑ったのであった──。
END
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