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視界は……一面荒野だった。
荒野と書いてアレノ。何もないくすんだ世界。薄いウスイ白にほど近い茶色のくすんだ世界。建物は何もない。
ただ、あるのは……。
白ではない、黒ではない、灰色の瓦礫が積み上げられたバショ。
小さな小さな砂のような破片はくすんだ地面に混じり、まだかつてそうであったカタチを残したままのモノは、不純物の多々混じった風にその身をさらす。
微笑んだ女神の像。
かつては信仰の象徴として崇められ、大切にされていたのだろう。今は……砂上に晒され誰も彼女を顧みる事なんて無いけれど。
そう、誰もいない空間。
誰一人として人のいない空間。
ヒト……“は”いない空間。
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