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「そう……ね。終わらないモノなんてあり得ない」
「いいや。唯一終わらないモノは……この歴史の想像」
「……そうね」
天使は小さく頷いた。
この荒れた地で歴史が小さく芽を吹き、育ち、そして……枯れる。
何度も何度も始まり、何度も何度も終わり、何度も何度もサイクルを廻る。同じ末路を辿る。
「もう、誰が始めたことかも忘れてしまったわ……」
天使は小さくこぼした。
そんな彼女の煤に晒しても純白の薄れない羽を見上げ、影は訊く。
「そういえば……どうしてキミは降りてこないんだい?」
その問に、天使はキョトンとその瞳を見開く。
二人の間を、霞んだ風と、雲間のヒカリと、そして長く短い時が流れた。
「降りられないわ。だって……私は」
「歴史の天使」
「そう。分かっていて訊いたのね。天使は見ることしかできない。見つめ嘆くことしかできない」
「それが、……役目」
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